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クリーン・ランゲージとは

クリーン・ランゲージとは、クライアントの表現した「言葉のそのまままの反復」と「クライアント自身から出てきた内的なメタファー(イメージや比喩的表現)」を使って、彼ら自身の有する思考や感情パターン、目標、葛藤についてより明確な理解を得させ、これらの変容を促すための、反復する問いかけ手法です。そしてこの問いかけには、「クリーンな問い」と呼ばれる12個の「相手の内的世界を汚染しない」の決められた問いを使っていきます。

 

この独創的な問いかけ法は、ニュージーランドのマオリ族出身で、アメリカにおいてベトナムからの帰還兵や虐待経験者などの深刻なトラウマ治療に大きく貢献した心理セラピストである、デイヴィッド・グローブが開発したものです。この技法を通じて、デイヴィッドは、患者やクライアントが、自分自身の行動や思考パターンに自ら洞察を深め、人生において生きる力を取り戻していくことをサポートしていきました。

デイヴィッドは、トラウマに苦しむ人々の治療に当たる中で、クライアントが自分の内面で起こっていることを、自然発生的に「メタファー(イメージや比喩・たとえ)」を使って表現することに気づきました。そして、そのメタファーの世界の中にいると、自分の内的世界をより直接的に深く体験し、それを通じて思考・行動の繰り返しのパターンの気づきを得ることによって、心の傷を癒して変容させることができることを発見したのです。
 

一方でデイヴィッドは、セラピストの行う言葉がけに、クライアント自身の使っている言葉以外の「セラピストによる解釈」、「セラピストによる要約」を混ぜてしまうことにより、しばしばクライアントの言葉を曲げて「汚染」し、彼らがメタファーによって表現している真の深い体験を「略奪」してしまうことに気づきました。

そこで彼は、クライアントが語るメタファーを通じた内的体験を、セラピスト側の判断や前提で「汚染」「歪曲」せず、クライアント自身が自分で探索して気づきを深めることを促すための一連のニュートラルな「クリーンな問い」を、作り上げました。

この過程において、デイヴィッドは、ミルトン・エリクソンの催眠療法、カール・ロジャース、ヴァージニア・サティアといった卓越した心理セラピストたちの言語パターンを研究して取り入れ、そこに自分自身の天才的な独創と着想によるワークを取り入れて、出来上がったものです。

この「クリーンな問い」が正しい文脈で行われると、クライアントは自分自身の体験について異なる角度から洞察を深めることができ、そして驚くべき速さで「自分が本当に望んでいること」を発見して、行動・思考の現実的な変化が起きてくるのです。


この質問はとてもシンプルで、かつ、基本的には12個しかありません。その代表的なものは、次のページでお知らせいたします。

<クリーン・ランゲージの効果>

クリーン・ランゲージの質問は、聞かれた側の人が彼ら自身についての洞察を深める働きを促し、かつ彼らに対して外から提案をすることはしません。そして、自分自身によって深められた洞察を通じて起こってきた変化は、それが、他から押し付けられたのではなく、自分自身で生み出したからこそ、とてもパワフルに現実に作用します。

クリーン・ランゲージでの問いかけをされた相手を使うと、例えば次のような変化が起こります。

  • 相手が自らの生活に望み通りの変化を起こせるよう、サポートをすることができます。

  •  自分も相手も、相手の考え方や行動の取り方に関する貴重な情報を得ることができる。

  • コミュニケーションや理解、ラポールを深めることができる。

クリーン・ランゲージは、そのシンプルさゆえにその使い方には色々な応用を利かせることができ、かつパワフルな効果を発揮するゆえに、欧米ではコーチングをはじめとして、ビジネス、カウンセリング、医療、教育、法律、ジャーナリズムと様々な分野で、これを用いることによって、大きな成長や発展を遂げたという例が報告されています。

また、クリーン・ランゲージは、一対一で使っても、グループで使っても、公式な場であっても、日常会話であっても、役に立ちます。

たとえば、コーチやセラピスト、カウンセラーや教師といった、相手から情報を集めて、その相手が望む方向への成長や変化ができるようにサポートするというような内容の仕事をしている方の場合、クリーン・ランゲージを習得することで、よりよい成果を上げることができます。

 

<セッション事例>

クリーン・ランゲージの対個人のセッションでは、クライアントが言ったそのままの言葉から、その一部分を選択し、特別な反復の言い回しと組み合わせて、クライアントが表現しているメタファーやイメージについて、「クリーンな問い」を使って問いかけをしていくという手順で行なっていきます。そしてこれらの問いかけにより、クライアントの注意をメタファーやシンボルについての詳細、シンボル同士の関係性へと向けていきます。

 

実は、これらのやりとりは、日常会話とは非常に異なったもので、文法的には間違ってすらいます。しかし、だからこそなのですが、クライアントはファシリテーターに対しては、認識的に応答することは「なくなります」。代わりに彼ら自身のメタファーと対話を始めます。なぜならば、ファシリテーターは、クライアントが自分自身のメタファーを探求していくことをガイドするためにそこにいるのであり、それらの意味を解釈したり、観察結果を伝えたりするためにいるのではないからです。

こちらの短いセッション例は、クライアントが、「より自信や確信を持ちたい」という願望を、最初に語っています。

この「自信」という抽象的な概念を、メタファーとして「大きな千年杉」というイメージに転換し、身体感覚としてそれがどのようなものかが分かることによって、クライアントが具体的にどのような状態であることが、「自信を持ちたい」ということなのかが、クライアント自身に気づきが起きているセッション例です。

(Fはファシリテーター、 Cはクライアント)

 

F1  あなたは、何が起きればいいのでしょう?

C1  自分が「やれる」と思ったことや「大丈夫だ」と思ってることに対して、「いやいや、そんなことないよ」とか、「そんなのもうほかの人がやってるよ」というようにすぐ湧いてくる否定の感情が無くなるといいと思います。

F2  で、自分が「やれる」と思ったことや「大丈夫だ」と思ってることに対して、「いやいや、そんなことないよ」とか、「そんなのもうほかの人がやってるよ」というようにすぐ湧いてくる否定の感情が無くなると、次に何が起きますか?

C2  自分に、より自信や確信が持てる感じになり、その否定の言葉や感情に引きずり込まれないようになります。

F3  で、自分が、より自信や確信が持てる感じになり、その否定の言葉や感情に引きずり込まれないようになる。

そして、自分がより自信や確信が持てる、のとき、その自分により持てる自信は、どんな種類の自信ですか?

CL3

なんか、大きな大木のような、千年杉のような揺るがない自信。生命力にあふれているというような自信です。

F4

で、大きな大木のような、千年杉みたいな揺るがない自信。生命力にあふれてる、というような自信。

そして、その、揺るがない自信というのが、大きな大木のような千年杉みたいであるというとき、その大木のような千年杉について、他に何かありますか?

C4

神聖な神社にいるような、両手では抱えきれないくらいのすごい太い幹で、てっぺんはもう空に届くような、生い茂っていて、そんな感じの千年杉です。

F5

で、神聖な神社にいるような、両手抱えきれないようなものすごい太い幹で、で、てっぺんは空に届くような、生い茂っている、そういう千年杉。で、自信。で、ゆるがなくって、生命力にあふれている、で、その両手で抱えきれないくらいてっぺんがこう生い茂っている、その千年杉は、どこにありますか?

CL5

ここ、ここに。私のこう、腕の前あたり、<ジェスチャー>

F6

腕の前あたり<ジェスチャー>。その、どのあたりに、揺るがない生命力にあふれてる大きなその抱えきれない、千年杉はありますか?

CL6

あー、でもやっぱりこう、おなかの下の方、この丹田の下のあたりから、ぐーっと生えている感じ、がします。<ジェスチャー>

F7

あー、で、こう丹田の下から、ぐーっと生えている、<ジェスチャー>こう感じがする。で、その丹田の下から、ぐーっと生えている感じ。そのグーッと生えてる感じ<ジェスチャー>は、どんな種類の、グーッと生えている感じですか?

C7

もうなんかそこに、しっかり根をはって、多少の風、雨風とかが吹いても、全然揺るがない。(あー)揺るがないんですよ。枝葉は多少揺れているけども、幹とか根は全然ゆるがなくて、どっしりとしている、そんな種類です。

F8

で、丹田のとこに、しっかりと根を張って、多少の雨風があっても、全然揺るがない。で、その幹や根は、全然揺るがなくって、どっしりしている。
そして、幹や根はぜんぜん揺るがなくって、どっしりしている、というとき、その幹や根、に、大きさや形はありますか?

C8

うん。なんかもうそのー、なんだろう、丹田の下の方から、足とか地球のほうに向かって、根が伸びていて、まあ、地球とつながってるのかなあ?そんな感じで、で、すっごい太い。(うん)私が3人いないと抱えきれない、そんな大きさ、です。

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